「事業主貸と事業主借は、どちらを選べばいい?」「個人のお金で事業の買い物をしたときは、どう登録するの?」と迷っていませんか。
名前はよく似ていますが、事業からプライベートへお金が動いたか、プライベートから事業へお金が動いたかで区別できます。
先に結論をまとめます。
- 勘定科目「事業主貸」:事業のお金を生活費などプライベートに使った
- 勘定科目「事業主借」:個人のお金を事業へ入れた
- 決済口座「プライベート資金」:個人のお金で事業の経費を支払った
- 帳簿への登録不要:個人のお金で個人的な支出をしただけ
この記事では、2026年7月28日に確認したfreee公式ヘルプをもとに、個人事業主がWeb版freee会計でプライベートに関係する取引を登録する方法を、初心者向けに解説します。
記事内の口座名・明細・金額は、解説用の架空データです。本記事は一般的な操作方法を説明するものであり、個別の支出が経費になるかどうかを判断するものではありません。
事業主貸・事業主借を一言で区別する
「貸」「借」は、事業から見たお金の向きを表します。
- 事業主貸:事業が、事業主のプライベートへお金を貸した
- 事業主借:事業が、事業主のプライベートからお金を借りた
例えば、事業用の銀行口座から生活費として50,000円を引き出した場合、事業のお金がプライベートへ出ていくので「事業主貸」です。
反対に、個人のお金100,000円を事業用口座へ入れた場合、プライベートから事業へお金が入るので「事業主借」です。
実際に金銭消費貸借契約を結ぶという意味ではありません。freee公式ヘルプでは、事業主貸・事業主借を毎回返済する必要はなく、年度締めの際に「元入金」へまとめられると説明されています。元入金とは、個人事業の元手を表す勘定科目です。
4つの場面を早見表で判断する
最初に「どのお金で、何を支払ったか」を確認します。
| 場面 | freeeでの基本処理 | 例 |
|---|---|---|
| 事業のお金をプライベートに使った | 事業主貸 | 事業用口座から生活費を支払った |
| 個人のお金を事業へ入れた | 事業主借 | 個人口座から事業用口座へ資金を補充した |
| 個人のお金で事業経費を支払った | 決済口座「プライベート資金」で経費を登録 | 個人の財布で事業用文房具を購入した |
| 個人のお金で個人的な支出をした | 登録しない | 個人の財布で日用品を購入した |
迷ったときは、まず「この支出や入金は事業の帳簿に必要か」を考えます。事業に関係がなければ、個人側だけで完結した取引は登録しません。
なお、自宅兼事務所の家賃や電気代、通信費など、1つの支出に事業用とプライベート用が混ざる場合は「家事按分」を行い、事業で使った割合だけを経費にします。freeeの家事按分機能では、プライベート利用分が事業主貸へ振り替えられます。家事按分の具体的な設定方法は、別の記事で解説する予定です。
事業用口座から生活費を支払った場合は「事業主貸」
freeeへ登録した事業用銀行口座から、生活費や個人的な買い物代を支払った場合は「事業主貸」で処理します。
例えば、事業用口座から個人の生活費50,000円を引き出した場合です。
- 口座:実際にお金が出た事業用銀行口座
- 勘定科目:事業主貸
- 金額:50,000円
- 発生日:実際の出金日
銀行口座を同期している場合は、同じ内容を手入力せず、[自動で経理]に取り込まれた出金明細から登録します。

この処理では、銀行口座の登録残高は減りますが、事業の経費は増えません。生活費を「消耗品費」「雑費」などにすると、事業の経費が実際より多くなるため注意してください。
所得税・住民税、国民健康保険料、国民年金保険料、個人的な医療費などを事業用口座から支払った場合も、事業の必要経費として扱う支出でなければ、freee公式ヘルプでは事業主貸として処理する例が案内されています。個別の税務上の扱いは状況により異なるため、判断に迷う場合は税理士または所轄の税務署へご確認ください。
同期した私用明細を「無視」してはいけない
freeeへ登録・同期した口座では、プライベートな支出も口座残高を動かします。
「事業に関係がないから」と明細を無視すると、その出金がfreeeの登録残高に反映されません。銀行から取得した同期残高だけが減るため、同期残高と登録残高が合わなくなります。
私用明細でも、freeeへ登録した口座から出金されている場合は事業主貸として処理します。明細を未処理一覧から消す目的だけで無視しないでください。
freeeの自動で経理の使い方とfreeeの残高が合わない原因と直し方もあわせてご覧ください。
個人のお金で事業経費を立て替えた場合は「プライベート資金」
個人の財布や、freeeへ登録していない個人口座・個人カードで事業の経費を支払った場合は、経費の支出取引を登録し、決済口座に「プライベート資金」を選びます。
例えば、個人の財布から事業用のコピー用紙3,000円を購入した場合です。
- 収支:支出
- 勘定科目:消耗品費など、実際の内容に合う経費科目
- 決済:完了
- 口座:プライベート資金
- 金額:3,000円
- 発生日:購入日

「プライベート資金」は、個人のお金で事業の支払いや入金を処理したことをfreeeへ伝えるための決済口座です。現在のfreeeでは、この方法で登録すると内部的に事業主借・事業主貸が使われます。
古い解説では「事業主借口座」を作る方法が紹介されている場合がありますが、freee公式ヘルプは、新しく利用を始める場合は原則として「プライベート資金」を使うよう案内しています。
レシートから登録する場合も、OCRで読み取られた日付・金額・勘定科目を確認したうえで、個人のお金で支払ったなら決済口座を「プライベート資金」にします。freeeでレシートを取り込む方法で撮影後の確認手順を解説しています。
個人カードをfreeeへ登録しなくてもよい場合
個人カードで事業経費を支払う回数が少ない場合は、カード自体をfreeeへ登録せず、事業に関係する支出だけを「プライベート資金」で登録できます。
私用明細が多い個人カードを登録すると、取り込まれた私用明細も事業主貸として処理する必要があります。登録するかどうかは、事業利用の件数と、すべての明細を処理する手間を比べて決めます。
個人のお金を事業用口座へ入れた場合は「事業主借」
資金不足を補うため、個人口座や手元の個人資金から事業用口座へ100,000円を入れた場合は「事業主借」で処理します。
- 口座:入金された事業用銀行口座
- 勘定科目:事業主借
- 金額:100,000円
- 発生日:実際の入金日
銀行口座を同期している場合は、[自動で経理]の入金明細から事業主借を選んで登録します。

この入金は、商品やサービスの対価として受け取ったお金ではないため、売上として登録しません。売上にすると、事業の収入が実際より多くなります。
自分の口座同士の移動でも、片方がfreeeに登録していないプライベート口座なら、freeeに登録した事業用口座側では事業主借として処理します。両方ともfreeeに事業用口座として登録している場合は、事業主借ではなく口座振替です。詳しくはfreeeの口座振替の使い方をご覧ください。
個人のお金で個人的な支出をした場合は登録しない
個人の財布や、freeeへ登録していない個人口座から個人的な買い物をしただけなら、事業のお金は動いていません。事業の帳簿には登録しません。
「プライベートな支出はすべて事業主貸にする」と覚えると、事業と無関係な取引まで帳簿へ入れてしまいます。
判断の順番は次のとおりです。
- 事業に関係する取引か
- freeeへ登録した事業用口座の残高が動いたか
- 個人のお金が事業のために動いたか
いずれにも当てはまらず、個人側だけで完結しているなら登録不要です。
プライベート兼用口座をfreeeへ登録するか
個人事業主は、1つの銀行口座やクレジットカードを事業とプライベートの両方に使うことがあります。ただし、freeeへ登録するかどうかで処理の手間が変わります。
freeeへ登録する場合
事業利用が多く、自動で明細を取り込みたい場合に向いています。
- 事業分は売上・経費・口座振替などで登録する
- プライベート分も事業主貸・事業主借で処理する
- freee上では口座の全残高を管理する
freeeへ登録しない場合
事業利用が少なく、私用明細のほうが多い場合に向いています。
- 事業に関係する取引だけ手入力する
- 個人のお金で支払った事業経費は「プライベート資金」を使う
- 私用明細を1件ずつ処理する必要がない
freee公式の判断例では、兼用口座を主に事業で使う場合や、事業の取引が月10件程度以上ある場合は、登録して同期する方法が候補とされています。件数は目安なので、実際の使い方と処理の手間で判断してください。
銀行口座を登録する場合は、freeeで銀行口座を連携する方法をご覧ください。
よくある間違い
事業主貸と事業主借を逆にする
「貸」「借」を自分個人の立場で考えると逆になりやすくなります。事業から見て、お金がプライベートへ出たら事業主貸、プライベートから入ったら事業主借です。
個人のお金で払った経費を登録しない
事業に必要な支出なら、個人のお金で支払っても事業の取引です。領収書などを確認し、決済口座「プライベート資金」で経費を登録します。
生活費を経費科目で登録する
事業用口座から生活費を支払っても、その支出が事業の経費へ変わるわけではありません。事業主貸で処理します。
個人からの資金補充を売上にする
個人のお金を事業用口座へ入れた場合は、通常の売上ではなく事業主借です。入金の理由を確認してから登録します。
同期した私用明細を無視する
同期済み口座の私用明細を無視すると、その出金・入金が登録残高に反映されません。事業主貸・事業主借で処理し、残高を合わせます。
登録後は残高と損益を確認する
プライベートに関係する明細を処理したら、次の点を確認します。
- 同期した明細が未処理のまま残っていない
- 事業用口座の登録残高と同期残高が同じ時点で一致している
- 生活費や資金補充が売上・経費へ混ざっていない
- 個人のお金で立て替えた事業経費は、適切な経費科目で登録されている
- 同じ支出をレシートとカード明細から二重登録していない
事業主貸・事業主借は、事業とプライベートの間のお金を整理するための科目です。どちらも、それ自体を売上や経費として損益に含めるものではありません。
よくある質問
Q. 事業主貸・事業主借は返済が必要ですか?
いいえ。freee公式ヘルプでは、事業主貸・事業主借を毎回返済する必要はなく、年度締めの際に元入金へまとめられると説明されています。
Q. 事業主貸は経費になりますか?
いいえ。事業主貸は、事業のお金をプライベートに使ったことを表す科目であり、それ自体は必要経費ではありません。
Q. 事業主借は売上になりますか?
いいえ。個人のお金を事業へ入れたことを表す科目であり、それ自体は売上ではありません。
Q. 個人のお金で事業経費を支払った場合、事業主借を直接選びますか?
原則として、現在のfreeeでは支出取引の決済口座に「プライベート資金」を選びます。経費科目は消耗品費など実際の内容に合わせ、freeeが内部的に事業主借を使って処理します。
Q. プライベートな銀行口座やカードもfreeeへ登録しますか?
必須ではありません。事業利用が少ない場合は登録せず、事業に関係する取引だけを「プライベート資金」で登録できます。登録する場合は、取り込まれる私用明細も事業主貸などで処理します。
Q. 事業用口座から個人事業税や所得税を支払った場合はどうしますか?
同じ処理ではありません。所得税・住民税は必要経費にならないため、事業用口座から支払った場合は事業主貸として処理します。一方、個人事業税は、一般に事業所得の必要経費となるため、事業用口座から支払った場合は「租税公課」の支出取引として登録します。税目や個別の状況によって扱いが異なる場合は、税理士または所轄の税務署へご確認ください。
まとめ
事業主貸・事業主借は、事業とプライベートの間で動いたお金を記録するための科目です。
- 事業のお金をプライベートに使ったら事業主貸
- 個人のお金を事業へ入れたら事業主借
- 個人のお金で事業経費を払ったら「プライベート資金」で経費を登録
- 個人のお金で個人的な支出をしただけなら登録しない
- freeeへ同期した口座の私用明細は無視せず処理する
- 登録後は同期残高・登録残高と損益を確認する
「事業から出たら貸、事業へ入ったら借」と、事業から見たお金の向きで覚えると判断しやすくなります。
参考:
- プライベート資金での取引の登録方法(freee公式)
- freeeに登録した口座からプライベートの支払いをした場合(freee公式)
- プライベート兼用の口座をfreeeに登録するか判断する(freee公式)
- プライベート兼用口座の会計処理(freee公式)
- 家事按分を登録する(freee公式)
- No.2210 必要経費の知識(国税庁)
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・会計の判断を行うものではありません。具体的なご相談は税理士または所轄の税務署にご確認ください。
