青色申告65万円控除の条件|令和9年分からの75万円控除も解説

青色申告65万円控除の6つの条件を示すチェックリストのアイキャッチ 確定申告の基礎

freeeの確定申告画面で「青色申告特別控除65万円」を選んでも、帳簿の付け方や提出方法などの要件を満たしていなければ、65万円控除は受けられません。freeeで帳簿を付けていることだけで、自動的に控除額が決まる制度ではないためです。

令和8年分(2026年分)までの青色申告特別控除には、最高65万円・55万円・10万円の区分があります。65万円控除を受けるには、青色申告の承認を受けるだけでなく、複式簿記、決算書類の作成、期限内申告などの条件を満たし、さらにe-Taxによる申告または優良な電子帳簿の保存が必要です。

先に結論をまとめると、個人事業主が65万円控除を目指す場合は、次の順番で準備します。

  1. 期限までに青色申告承認申請書を提出する
  2. 事業の取引を複式簿記で記帳する
  3. 記帳に基づいて貸借対照表・損益計算書等を作成する
  4. 確定申告書に必要事項を記載し、決算書類を添付する
  5. 法定申告期限までに申告する
  6. e-Taxで申告する、または優良な電子帳簿の要件を満たして保存・届出を行う

この記事では、令和8年分(2026年分)までの現行制度を中心に、個人事業主向けに65万円控除の条件を整理します。令和9年分(2027年分)から適用される改正についても、成立済みの法令と国税庁の案内に基づいて後半で説明します。

なお、65万円控除は、税金が65万円そのまま返ってくる制度ではありません。対象となる事業所得・不動産所得の金額から最高65万円を差し引く制度で、実際の税負担への影響は所得金額や他の控除などによって異なります。

令和8年分までは65万円・55万円・10万円の3段階

令和8年分(2026年分)の所得税までの主な違いを整理すると、次のようになります。令和8年分は2027年2月から3月ごろに行う確定申告の対象です。

確認項目65万円控除55万円控除10万円控除
青色申告の承認必要必要必要
正規の簿記(一般的には複式簿記)必要必要不要(簡易な記帳でも可)
貸借対照表の添付必要必要不要
期限内申告必要必要65万円・55万円の適用要件ではない
e-Taxまたは優良な電子帳簿保存どちらかが必要不要不要
控除額最高65万円最高55万円最高10万円

65万円控除と55万円控除の大きな違いは、e-Taxによる期限内申告、または優良な電子帳簿保存・届出の要件です。

そのため、65万円控除を目指すときは、まず55万円控除の条件を満たす記帳と決算書類を整え、そのうえでe-Taxなどの追加要件を満たすと考えると分かりやすくなります。

10万円控除は、正規の簿記によらず、簡易な記帳を行う青色申告者も対象になり得ます。ただし、記帳、帳簿書類の保存、確定申告や必要書類の提出まで不要になるわけではありません。

令和9年分から75万円・65万円・10万円へ変わる

令和8年度税制改正により、青色申告特別控除の控除額と要件が見直されました。改正法は2026年3月31日に公布され、令和9年分(2027年分)の所得税から適用されます。実際に改正後の制度で申告するのは、原則として2028年2月から3月ごろです。

主な区分は次のとおりです。

区分令和9年分以後の主な要件
75万円控除65万円控除の要件に加え、優良な電子帳簿の保存またはデジタルシームレス保存の要件を満たし、必要な届出を行う
65万円控除正規の簿記で記帳し、貸借対照表・損益計算書等を期限内にe-Taxで提出する
10万円控除75万円・65万円の要件に該当しない青色申告者が対象。簡易な記帳でも対象になり得るが、新たな収入金額要件がある

令和8年分までは、正規の簿記などの要件を満たせば、書面申告でも最高55万円控除を受けられます。令和9年分以後は55万円区分がなくなり、書面申告の場合の控除上限は原則として10万円になります。65万円控除には期限内のe-Tax提出が必要です。

75万円控除は、e-Taxで提出するだけでは受けられません。65万円控除の要件に加えて、次のどちらかが必要です。

  • 仕訳帳・総勘定元帳を優良な電子帳簿の要件に従って保存し、必要な届出を行う
  • 国税庁長官が定める基準に適合するシステムを利用して、対象となる電子取引データを要件に従って送受信・保存する「デジタルシームレス保存」を行い、必要な届出を行う

10万円控除にも制限が追加されます。簡易な記帳を行う人のうち、事業所得または事業として行う不動産所得があり、そのいずれかに係る前々年分の収入金額が1,000万円を超える場合は、10万円控除を受けられません。また、10万円控除でも損益計算書の提出が必要です。

令和8年分の申告では、引き続き本記事の「65万円控除を受けるための6つの確認項目」を使えます。ただし、令和9年分以後は要件が変わるため、申告する年分と国税庁の最新案内を必ず確認してください。

令和8年分までの65万円控除を受けるための6つの確認項目

① 青色申告の承認を受けている

青色申告を始めるには、事前に「所得税の青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署へ提出します。

開業届を提出しただけでは、青色申告の申請をしたことにはなりません。青色申告承認申請書を提出しているか、提出した年分が合っているかを確認しましょう。

提出期限は、この記事の後半で説明します。

② 事業所得、または事業として行う不動産所得がある

国税庁は、55万円控除の要件として「不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営んでいること」を挙げています。65万円控除は、この55万円控除の要件を満たすことが前提です。

給与所得や雑所得から青色申告特別控除を直接差し引く制度ではありません。副業による収入が事業所得に当たるか、雑所得に当たるかは、活動の実態などを踏まえて判断されます。

個別の所得区分はこの記事だけで判断せず、迷う場合は税理士または所轄の税務署へ確認してください。

③ 正規の簿記の原則で記帳している

65万円・55万円控除では、対象となる取引を正規の簿記の原則に従って記帳します。国税庁は、一般的には複式簿記と説明しています。

複式簿記では、売上や経費だけでなく、現金・預金・売掛金・クレジットカードなどの増減も記録します。そのため、損益だけでなく、年末時点の資産・負債の状態も確認できます。

会計ソフトを使っていても、次のような状態では決算時に残高が合わなくなることがあります。

  • 銀行やカードの明細を取り込んだまま、取引登録していない
  • 同じ支払いをレシートとカード明細の両方から登録した
  • 事業用と私用の支払いを区別していない
  • 売掛金やクレジットカードの未払分を記録していない
  • 開始残高や期末残高を確認していない

freeeで最初に確認する設定は、freeeの初期設定を5ステップで解説した記事をご覧ください。

④ 貸借対照表・損益計算書等を作成して添付する

複式簿記による記帳に基づいて、貸借対照表と損益計算書などを作成します。

  • 損益計算書:1年間の売上・経費・利益の状況を表す
  • 貸借対照表:年末時点の資産・負債・元入金などの残高を表す

会計ソフトが書類を作成してくれる場合でも、内容の正確性まで自動的に保証されるわけではありません。申告前に、銀行口座、現金、クレジットカード、売掛金、未払金などの帳簿残高が実際の残高と合っているか確認します。

銀行口座の連携方法はfreeeで銀行口座を連携する方法、取り込んだ明細の処理方法はfreeeの「自動で経理」の使い方で解説しています。

⑤ 確定申告期限までに提出する

65万円・55万円控除を受けるには、確定申告書へ控除額などの必要事項を記載し、貸借対照表・損益計算書等とともに法定申告期限までに提出する必要があります。

還付申告になる場合でも、65万円・55万円控除を受けるためには確定申告期限までの提出が必要です。

期限直前に1年分をまとめて確認すると、未登録明細や残高差異の修正が間に合わないことがあります。毎月または少なくとも数か月ごとに未処理取引と残高を確認しておくと、決算時の負担を減らせます。

⑥ e-Taxまたは優良な電子帳簿保存の要件を満たす

ここが65万円控除と55万円控除の主な違いです。

55万円控除の要件を満たしたうえで、次のどちらかを満たします。

  1. 確定申告書、貸借対照表、損益計算書等を、期限までにe-Taxで送信する
  2. 仕訳帳と総勘定元帳を優良な電子帳簿の要件に従って電子保存し、所定の届出を行う

「会計ソフトに帳簿が保存されている」だけで、必ず優良な電子帳簿の要件を満たすとは限りません。優良な電子帳簿保存を選ぶ場合は、要件と届出を国税庁の案内で確認してください。

初めて65万円控除を目指す方には、記帳と決算書類を整えたうえで、e-Taxにより期限内申告する流れのほうが理解しやすいでしょう。

freee公式ヘルプによると、freee会計で作成した個人の確定申告書は、マイナンバーカード方式でスマートフォン、またはPCとカードリーダーを使って電子申告できます。必要なアプリや対応環境は変更される可能性があるため、申告時に最新の公式案内を確認してください。

freeeで申告書の作成からe-Tax送信まで進めるための準備は、freeeだけで確定申告は完結できる?で詳しく説明しています。

青色申告承認申請書はいつまでに出す?

国税庁が案内する主な提出期限は次のとおりです。

状況青色申告承認申請書の主な提出期限
すでに事業をしていて、新たに青色申告を始める青色申告をしようとする年の3月15日まで
その年の1月1日から1月15日までに開業原則としてその年の3月15日まで
その年の1月16日以後に新規開業開業日から2か月以内

相続による事業承継などには別の期限があります。期限日が休日の場合や個別事情がある場合は、国税庁の最新案内または所轄税務署へ確認してください。

申請期限を過ぎてから、その年分へさかのぼって青色申告を適用できるとは限りません。開業したら、日々の記帳より先に申請期限を確認しておきましょう。

freeeを使う場合も、日々の確認が必要

freeeを使うと、銀行・クレジットカード明細の取り込みや、登録内容に基づく決算書類の作成を効率化できます。ただし、次の確認は利用者自身が行う必要があります。

  1. 事業所情報と会計期間を確認する
  2. 事業用の銀行口座・カードを登録する
  3. 開業時または期首の開始残高を設定する
  4. 取引を継続して登録する
  5. レシートと同期明細の二重登録を防ぐ
  6. 未処理明細を残さない
  7. 登録残高と実際残高を照合する
  8. 決算書類の内容を確認する
  9. 期限に余裕を持ってe-Taxの準備をする

レシートの撮影から取引登録までの流れは、freeeでレシートを取り込む方法で解説しています。

65万円控除でよくある勘違い

青色申告承認申請書を出せば、自動的に65万円控除になる

申請書の提出は青色申告を行うための事前手続きです。65万円控除には、複式簿記、決算書類、期限内申告、e-Taxまたは優良な電子帳簿保存などの追加条件があります。

freeeを使えば、無条件で65万円控除になる

freeeは記帳や書類作成、電子申告を支援するツールです。取引の登録漏れや誤り、二重登録、残高の不一致などは利用者が確認しなければなりません。

65万円がそのまま還付される

65万円は税額から直接差し引く金額ではなく、対象となる所得金額から差し引く最高額です。

また、控除前の対象所得が65万円より少ない場合、控除できる金額はその対象所得の範囲が上限になります。

紙で申告しても65万円控除になる

令和8年分までは、55万円控除の要件だけを満たし、e-Taxまたは優良な電子帳簿保存の追加要件を満たさない場合、65万円控除ではなく最高55万円控除の対象になります。

令和9年分以後は、65万円控除にもe-Taxによる期限内提出が必要となり、書面申告の場合の控除上限は原則として10万円になります。

期限後でも、還付申告なら問題ない

還付申告であっても、65万円・55万円控除には期限内提出が必要です。申告期限を過ぎないように準備しましょう。

副業収入なら必ず事業所得になる

副業という呼び方だけで所得区分は決まりません。活動の実態によっては雑所得となる場合があり、雑所得から青色申告特別控除を差し引くことはできません。

所得区分に迷う場合は、個別に税理士または所轄税務署へ確認してください。

65万円控除の準備チェックリスト

次の項目を、申告期限直前ではなく年内から確認します。

  • □ 青色申告承認申請書を期限までに提出した
  • □ 65万円控除の対象となる所得がある
  • □ 現金主義による所得計算の特例を選択していない
  • □ 取引を複式簿記で継続して記帳している
  • □ 銀行・カード・現金などの残高を照合した
  • □ 未登録明細と二重登録を確認した
  • □ 貸借対照表と損益計算書等を作成した
  • □ 申告書へ控除額などの必要事項を記載した
  • □ e-Taxで提出する準備をした、または優良な電子帳簿保存の要件と届出を確認した
  • □ 確定申告期限までに申告できる日程を確保した
  • □ 帳簿・決算関係書類などの保存方法を決めた

青色申告者は、仕訳帳・総勘定元帳などの帳簿や、損益計算書・貸借対照表などの決算関係書類を原則7年間保存します。その他の取引関係書類は原則5年間ですが、書類の種類や消費税・インボイス制度などにより異なる場合があります。保存期間は国税庁の最新案内を確認してください。

よくある質問

Q. 65万円控除と55万円控除の差は何ですか?

令和8年分までは、55万円控除の要件に加えて、e-Taxによる期限内申告または優良な電子帳簿保存・届出のどちらかを満たすと、最高65万円控除の対象になります。令和9年分以後は55万円区分がなくなります。

Q. freeeで確定申告書を作り、印刷して郵送すれば65万円控除になりますか?

いいえ。 印刷して郵送するだけでは、e-Taxによる申告の要件を満たしません。令和8年分までは、優良な電子帳簿保存の要件も満たしていなければ、65万円控除ではなく55万円控除の条件で判定されます。令和9年分以後は、書面申告の場合の控除上限は原則として10万円です。

Q. 令和9年分から、e-Taxで申告すれば75万円控除になりますか?

いいえ。 e-Taxによる期限内提出だけで対象になるのは最高65万円控除です。75万円控除には、65万円控除の要件に加えて、優良な電子帳簿の保存またはデジタルシームレス保存と、必要な届出が求められます。

Q. 赤字でも65万円を控除できますか?

青色申告特別控除は、対象となる黒字の事業所得・不動産所得の金額が上限です。65万円が現金で支給されたり、控除しきれない部分がそのまま還付されたりする制度ではありません。

青色申告には純損失の繰越しなど別の特典もありますが、適用条件があります。個別の取り扱いは税理士または所轄税務署へ確認してください。

Q. 申告期限に遅れたらどうなりますか?

65万円・55万円控除は期限内申告が条件です。青色申告の承認など他の条件を満たしていても、期限後申告では最高10万円控除となる場合があります。延滞税など別の影響が生じることもあるため、早めに税務署または税理士へ確認してください。

まとめ

令和8年分までの青色申告65万円控除を受けるには、次の条件を一つずつ満たす必要があります。

  1. 青色申告の承認を受ける
  2. 対象となる事業所得または不動産所得がある
  3. 正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)で記帳する
  4. 貸借対照表・損益計算書等を作成して添付する
  5. 確定申告期限までに提出する
  6. e-Taxまたは優良な電子帳簿保存・届出の追加要件を満たす

65万円控除は、申告時だけの作業で決まるものではありません。日々の記帳、証憑の保存、残高照合を続け、期限に余裕を持って電子申告を準備しましょう。

令和9年分以後は、65万円控除に期限内e-Taxが必須となり、75万円控除が新設されます。書面申告の55万円区分はなくなるため、これまで書面で申告していた方は早めにe-Taxの準備を進めてください。

参考:


本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務・会計上の判断や助言を行うものではありません。具体的な判断は、税理士または所轄の税務署へご確認ください。税制やfreeeの機能は変更される場合があります。

現行制度に関する記述は、国税庁タックスアンサーNo.2072・No.2070(令和7年4月1日現在法令等)を2026年7月30日に再確認した内容に基づいています。令和9年分以後の改正部分は、2026年3月31日に公布された改正法と、2026年7月30日に確認した国税庁の案内に基づいています。

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